「暇か?」

朝の挨拶を交した次にそう聞かれ少しうな垂れた


change for the ―



「ご覧の通り」

「なら出かけるぞ、ほら」

「え?」

投げられたそれを胸元でキャッチし見つめる

「・・・銃?」

「接近戦のは危なっかしいからな」

それが理由らしい


「バルフレアのに比べて私の小さいわね」

「初めてならそれで十分だ」

「いきなりやったら肩を痛めるしな」

「そうなんだ」

「じゃ行くか」

「ええ、、って何処?」




気晴らしだ、とバルフレアが用意していたのは
シュトラール内部に格納されている複座タイプのエアバイク

「私はどこに乗ればいいの」

「後部席だ」

「王座みたい」

「眺めはいいんだぜ、出発するから振り落とされるなよ」

「そんなこと言ったって―ッ」

あっという間に地面から離れ加速していく
一瞬無重力を感じて背中がゾクリと震えた

「乱暴よ運転!」

「聞こえないな」

「聞こえてるじゃない」

「下噛まないようにしろよ」

「っもう!」



風が髪を靡かせ服が旗のようにゆらめき
下を見ればまるで鳥にでもなった様―




目的地に到着しエアバイクを岩陰に隠し戦闘の用意をする


、使った事はあるのか?」

「一応はね。動かないものに対してだけど」

覚えさせられたと言う方が正しいかもしれない。

身を守る術として剣よりも軽く
引金を引くだけで致命傷を与えられる武器
非力な人間や護身用にも向いている


「基礎が解ってるなら教えるのも早い。実践あるのみだな」

「・・・スパルタ・・・」



そんな話をしている間にモンスターが出現し
否応なしに戦闘に入る
確実に狙いを定めて当てていき何とかその場は乗り切った
倒したのは殆どバルフレアだったが。

「まずまずだな」

「それは先生がいいからじゃないかしら?」

「そうかもな」

「じゃあもう少し奥に行ってみない」

「ブロック塀が見えるから遺跡?」

「何かの跡地だろうな。―おい、あんまり行くなよ」



背後に気配を配りながら歩いているバルフレアをよそに
猪突猛進、前に進む

その足取りが止まり振り返りながら問いかける


「ねぇ、あそこに宝箱があるんだけど、トレジャーし、、、、」




角を曲がった処にあったのか丁度俺からは見えなかった

不自然に区切られた言葉に気づき
追いついた時にはミミックがに向って飛び掛ってこようとする直前―

応戦しようとしたの銃はモンスターに弾かれ床の上で回転している



無我夢中で庇う様にその間に割り込み
敵の一撃が腕をかすめ苛立ちに眉を寄せ舌打ちをする


「―ッチ」

「バルフレアッ!」

が迫った声を上げた
そんな時は見なくてもわかる様な状況だろう

敵が攻撃をしかけにこっちに向っているという事

を抱えたままステップを踏むかように体を翻し
モンスターに銃口を向けた。

その最後に告げた言葉に皮肉をこめて言い放つ


「デートの邪魔すんなよ」


バルフレアのそのセリフに声が出てしまった。
でも銃声の音によってきっと彼の耳には聞こえてはいない―





「おい、大丈夫か?」

「あ、、ええ、うん。それよりバルフレアが」

「大丈夫だ、すぐに治る」

魔法が傷口を包みあっというまに消えていった


「ごめんなさい、、、、こんな事になって」

「バカだな、俺の不注意でもあるだろ。気にすんな」

いつも誰かをフォローする時、バルフレアの言葉は乱暴にも聞こえる
でもお節介を焼く性分なのにそれを隠そうとしている所が彼らしい優しさだと解っている。


「ありがとう、バルフレア」

「・・・それ」

「?」

が目を覚ました時もそうやって言ったよな」

「言ったわ、、、確かね」


『嘘っぽくない』、と言ったら聞こえが悪いかもしれない。

他の奴がそうだと言う訳でも、無理をして繕うわけでもなく言葉と表情にただ純粋にそう感じていた。
ありがとうと言われることから離れた生活をしているからだろうか―



「さて、行くか」

に手を差し延べ、もと来た道を歩き出した

「練習は終り?」

「いや、場所を変えるだけだ。」

「そうね、遺跡よりももっと広いところが良いわ。折角晴れてるし」

「だろ?次は街でデートの続きも悪くなしな」

「バルフレアってやっぱり先生に向いてるんじゃない?」

「そんな面倒くさいのはゴメンだ」

「やっぱ私も反対。お昼を奢って貰うのそれじゃ気が引けるもの」

「ったく」

「それにバルフレアとそういう関係っていうのも嫌だし」

笑顔でそう言って先を歩くは楽しそうに笑い
今度はバルフレアの手を取り歩き出す


重なった目線が妙に可笑しくて二人は小さく笑う。
その間を流れていったのは熱さをともなった夏風―